認 活男【にん かつお】ブログ
認知症看護認定看護師の情報発信活動ブログ
看護・介護

治る可能性のある認知症(内科的疾患等)

目次

治療で改善する可能性のある認知症

先日は脳の疾患で治療可能な認知症を書きましたが、今日はその他の疾患で治療可能(正確には改善する可能性)な認知症について書きます
ここで注意しないといけないのは、せん妄症状とは分けて考えることが必要だという事。せん妄は認知症のようにみえますが、意識障害であり一日のうちでよくなったり悪くなったりすることや注意障害(キョロキョロしていたり会話がずれたりする)がある事が特徴です

せん妄についての記事はこちら

認知機能の低下を来す病気

  • 甲状腺機能低下症
  • ビタミンB1,B12欠乏症
  • 肝性脳症

甲状腺機能低下症

甲状腺は、喉ぼとけにある蝶のような形の臓器で甲状腺ホルモンをつくっています。甲状腺ホルモンは心臓、肝臓・腎臓など各臓器へ作用し新陳代謝に大きな役割を果たしていますが、このホルモンが低下した状態を甲状腺機能低下症と呼び脳の働きを低下させることに繋がります

甲状腺機能低下で一番多い病気は橋本病(慢性甲状腺炎)で体のむくみや寒気等とともに認知症のような症状が出たりボーッとしていたりします

過去に私の病院に入院された患者様は看護師の間で
「何かボーッとしていて違うんだよね。会話も解っているのかいないのか不明だし、認知症が出るような年齢でもなさそうだし・・・」
という話題から採血で甲状腺の値を測定したら低下していた。という事がありました

結局内服を開始したことで症状は改善し退院されたのですが、“何かおかしい”という事から”採血をしてみたらどうだろうか”と考えるきっかけになったと思っています

ビタミンB1,B12欠乏症

ビタミンB1欠乏症はアルコール依存症や偏食で起こることが多く
進行するとウェルニッケ脳症を発症し認知機能が低下します
症状としては

  1. 意識障害
  2. 眼球運動障害
  3. 歩行障害

がありますが、85%の方がコルサコフ症候群に移行するといわれ
ウェルニッケ脳症よりも認知機能の低下が増強してしまいます
一度コルサコフ症候群になると回復することは難しいです


ビタミンB6欠乏症はアルコール依存症や腸からの吸収障害、薬剤により低下することがありますが食品に多く含まれることから起こる事は少ないといわれています
しかし起こった時には

  • 貧血
  • 末梢の神経障害
  • けいれん発作
  • ペラグラ様症状(皮膚炎、下痢、嘔吐、認知機能低下、最悪の場合は亡くなることもある)

の症状が出現します


ビタミンB12欠乏症は胃癌で胃の摘出手術を受け数年経過した場合や、貧血、アルコール依存症、偏食(菜食主義)によって起こります。ビタミンB12は魚介類やレバーに含まれていて
症状としては

  • 記憶障害や注意障害(キョロキョロしたり会話がずれたりする)
  • 幻覚、妄想、抑うつ症状
  • 運動・感覚障害、自律神経障害(めまいや動悸、激しい血圧変動、倦怠感など多彩な症状)

があり、ビタミンの補給で改善します


私が経験した事例では
ビタミン欠乏症を起こしている人の全員がアルコール依存症の方でした
田舎の病院という事が関係しているのかもしれませんが、入院後数日してアルコール性のせん妄状態を起こして対応困難になることが多く、加えて年齢が若かったりすると女性での対応がかなり難しかったです。

私はお酒を飲むときは量を守り時々飲むくらいが良いと考え、毎日飲んでいたのを週に1回程度の飲酒へと切り替えました。

以前と比べると体調がよくなったような感じもするので、皆さんも試してみてはどうでしょうか

肝性脳症

肝性脳症とは肝臓の機能の障害で、解毒されて便として排泄されるはずのアンモニアが排出されず、体の中に残ってしまう状態を言います
アンモニアが体に残ると

  • 認知機能の低下
  • 睡眠障害
  • 幻覚
  • 羽ばたき振戦(前にならえをして手の平を前に見せるような姿勢を保持できない)

といった症状がでてきます。症状が重度になると死に至ることも考えられます

私の病院では、この症状で毎回入院してくる患者がいらっしゃいます。自宅ではお薬を飲んでいらっしゃいますが、恐らく便秘などからアンモニアが排出できないのではないかと話をしています。肝性脳症の方には下剤が処方されることや、食物繊維を多くとる指導が行われています

まとめ

今回は治療することで改善する可能性がある認知症について書きました
外来で相談を受けていると、物忘れのある方が「俺は認知症じゃない」といって検査を拒否される場面がすごく多いことに気付きました

認知症症状=アルツハイマー型認知症ではないことを理解することで、検査を拒否する患者様が少しでも減ってもらえればと思っています

また、もし認知症であっても認知症の内服薬を服用する事で、症状が悪化していくのを和らげることができますので、どちらにせよ早期受診を行うのは良い結果に繋がると考えています

家族や親せきの方、老健や特老の方、もしくは自分など身近に認知機能の低下を起こしている方がいらっしゃれば早めに受診をしてもらうきっかけになれば幸いです

最後まで読んで頂きありがとうございました


前回の脳の疾患で治療可能な認知症と同様、内科的疾患でも治療できる認知症があります

ABOUT ME
認 活男
准看護師として認知症看護に関わり始め看護師へとステップアップ、在宅や介護保険制度に関わる知識が必要と考えケアマネージャーの資格を取りました。そんな時に同居している祖父がアルツハイマー型認知症と診断され家族としての介護がスタート。昼間は仕事で認知症の方と関わり、その他の時間は自宅で認知症介護という日々を送りました。精神的にも肉体的にも疲れましたが、その時の経験を生かして、認知症に苦しむ方達のために活動をしていこうと決意。認知症看護認定看護師の資格を取得して現在は認知症者本人やその家族、看護師・介護士からの相談や指導に関わっています