目次
患者紹介と対応した事
先週から入院している80歳代の患者、褥瘡(床ずれ)による発熱と誤嚥性肺炎
施設からの入所で情報をみると寝たきり状態で、意思疎通はできない
認知症の診断はあり
日常生活は全部介助、四肢の麻痺がある
時々うなり声をあげることがあり精神薬を服用していた
入院後も時々大声を出すことがあり、声が部屋から漏れることもしばしば
口を開けることができず、注射器(栄養注入用で針なし)などを利用して直接口の中に流動食を注入している
大声を上げる原因が
褥瘡の痛みや同じ体位が続いたことではないかと推測して対応したことで、大声がなくなった事例です
そんなこと?
と思うかもしれませんが、実際の現場ではスルーされがちな事例なんです
なぜスルーされるのかも考えてみました
大声を上げる意味
まず認知症でない方が大声を上げるのはどういったときだろうか
思いつくのは
- 何かを人に伝えたいとき
- 感情の変化を表すとき(楽しいや悲しいなど)
- 痛みがある時 など
他にもあるのかもしれないが・・・
では、認知症の人で考えるとどうだろう
何か違いがあるのだろうか?
答えはもちろん
一緒です
一病院で起こっている事実
患者
「あー、あー」
スタッフ
「認知症の人で寝たきりの人よね。不穏状態になっているね。薬の検討しないといけないね」
これ絶対あります
うちの病院では大分改善されてきたけど、まだまだこんな病院や施設はあります
断言できます
なぜなら
認知症に関わっている人同士での情報交換で、話題に上がるからです
さらに言うと
私の病院でも昔はそうだったし、
その前に勤めていた病院でもそうだったから
私自身も認知症の事を勉強しなければ
いまだにそうだったに違いないと思います
何故そんなことが起こるのか?
これは
認知症が脳の萎縮や脳血管の梗塞・出血等の原因
(他にも原因はあります)により
短期記憶障害や見当識障害(時間・場所・人物がわからなくなる)等の症状が出現するからです
このことから
- 説明してもすぐに忘れるので何回説明しても同じ
- 訴えのできる人(認知症のない人)から先に対応しよう
- 「すぐに忘れる」「理解できない」ので適当に対応しておけば大丈夫だろう
といった考えが生まれて
“大声を上げる原因を探る”という思考が停止するからだと考えられます
人間は楽をしようとする生き物なので
ほとんどの人がこう言った思考停止状態に陥ると思います
自分がそうだったように‼⇒反省してます
思考停止状態のたどり着く先は
精神薬の服用という薬物での身体拘束状態です
もちろん脳の萎縮により怒りっぽい性格となった結果として
精神薬が必要な患者も多数います
学んだこと
実際この患者は入院後2日間くらい痛み止めを服用せず、施設では全く服用していませんでした
時折大声がみられていましたが、「何か落ち着かないね」程度の対応だったようです
その後カンファレンスを開き、
褥瘡の痛みがあるから大声を出すのかもしれない。
鎮痛薬の服用を促そうという方針となり大声はほとんどなく今に至っています
このことから学んだこととして
認知症の患者を看護・介護するときに
先入観をもって患者をみると真実に気付かない
認知症の「ある」「なし」に関わらず同じように原因検索をすべき
という事です
最後まで読んで頂きありがとうございました