認 活男【にん かつお】ブログ
認知症看護認定看護師の情報発信活動ブログ
本や新聞の感想

認知症世界の歩き方①

目次

認知症世界の歩き方を読んで感じたこと

認知症とは
認知機能が働きにくくなったために、生活上の問題が生じ暮らしづらくなっている状態
と説明してある

認知症の診断基準(DSM-5)でも同じように書かれていて、上記の他に
せん妄とは区別する事
他の精神疾患とは区別する事(例:うつ病や統合失調症)
と謳われている

個人的にはここはすごく重要だと考えている

すなわち生活の障害というところだ

生活とは毎日送っていくもので、家族であれば共に助け合って送っていることが多い

(我が家では祖母は畑を耕していて季節に応じた野菜を作り、その野菜を収穫したものを母が食事のおかずにしていた)

そんな中
家族員の一人に認知症という生活障害を起こす病が現れると生活のバランスが崩れる。
認知症の方はさることながら、支えている方の精神的・身体的な負担が増え、ストレスが増大し時間の経過とともにそのストレスは拡大していく。他者に対応を任せようとすると金銭的負担が発生するので生活に余裕がない方はどうすることもできない

これが認知症の一番怖いところだと考えている

話が少し脱線したがこの本を書いた著者の目的は

どうやって認知症と共に生きるかを考えよう。
認知症の方を変えようとしても脳の疾患なので変えられない。
ならば付き合い方や周りの環境を
変える。
そのためには認知症の方に起こっている事実を当事者の方から拾い集め、皆さんに知ってもらおうという趣旨のもと作られた本だと感じた

参考になったところ(箇条書き)

  • バスから降りるときに、”降りる場所を間違えまいという緊張感”で降車ボタンが押せない
  • 入浴を嫌だと思う理由の一つにはお湯がヌルヌルしたり、時には熱すぎたり冷たいと感じることがあるため
  • 何度も同じ物を購入してしまうのは記憶障害が原因であることの他に、定期的な習慣(その行為をしよう。しなければならないという強い思い)が頻繁に思い出されるから
  • メモをしたくても「聞く」と「書く」を同時に出来ないのでメールやメモを渡される方が助かる
  • 毎日同じ時間に商店街にいったり、一見徘徊と思われるような行動をとるのは道に迷っている理由の他にも、20歳代にタイムスリップしその世界を歩いて楽しんだりする(風景を楽しんだり)という理由もある。
    他者に理由を聞かれてもうまく説明できない
  • 人の顔を覚えるのを諦め、周りの仲間や家族に頼ろうと考えを切り替えた時から人に聞くことに抵抗がなくなった
  • 商店街を歩くたびに舗道の地面がグネグネと動く。よく見ると白と黒のタイルだった。
    ホテルで真っ白のタイルに真っ白の便器がありどこに座ればいいかわからなかった。大理石の床が一面水浸しに見え、玄関マットが落とし穴に見えた。
    2次元(平面)の情報を3次元(空間)に変換できない
  • 施設入所や入院、外出機会の減少の為に太陽光を浴びる時間が減る事で体内時計が狂う
  • 服の形ははっきりしているものがいい。薄手のカーディガンのようにグチャっとなってしまうと全体像が分からない。首の後ろに目印を付けそこを持ち上げるように工夫することで便利になった。ゴワゴワしている素材よりサラサラしている素材が良い。腕が引っ掛かると途端にどう動かせばいいかわからなくなる。
  • トイレの案内サインが見つからない
    壁から飛び出して表示されておらず、貼ってあるだけ(高い位置に小さく)なので視界に入らない
  • 救急車のサイレンの音や喫茶店での光が目に突き刺さるように飛び込んできたので、友人との楽しい食事や会話が楽しめず帰りたくなった
    特定のモノ・コトに目・耳・思考が固執し他に注意を向けられない
    →五感から入ってくる大量の情報の中から注意するもの、しないものの選択が出来なくなる

まとめ

今回は認知症を持っている当事者の方の意見を書き綴った
このような症状がある中で、認知症発症前と同じ生活を送ろうとするのは無理な話ではないかと再確認することができた

私は学生時代サッカーをしていたが、当時と同じようなプレーをすることは絶対に無理だ。
自分でもそう思うし、他の人から見てもそう思うだろう

ここで考えないといけないのは
何故他の人から見てもそう思うのか?ということ

それは”老い”という事がどういうことかを皆が知っていたり、自分で体験しているからだろう

では
認知症はどうか?

他者から見えるのは
物忘れや徘徊などの症状のみで本質的なところは理解できていないのではないか

なぜ徘徊をするのか?入浴をしないのか?同じことを何回も聞くのか?買い物に何回も行くのか?服を着れないのか?

このことについては、
周囲の人が知れるような工夫をすることが大事だと思っている

具体的には
学校の授業で教える事や企業で研修会を開く事などが当てはまる
市民向けの学習会を開くのも良い

とにかく
認知症の症状を知る機会を増やさないと、被害にあうのは認知症を患った方やその家族ではないかと思う

認知症になる方はこれからどんどん増えてくる
対応が後手に回ってしまうと、それだけ被害を受ける方が増えてくる

そうならないために出来るだけ活動をやって行こう‼

最後まで読んで頂きありがとうございました


第2章として
認知症とともに生きるための知恵を学ぶ。といったことも書いてあったので次回のブログで書くことにします

認知症の歩き方②については
こちら

ABOUT ME
認 活男
准看護師として認知症看護に関わり始め看護師へとステップアップ、在宅や介護保険制度に関わる知識が必要と考えケアマネージャーの資格を取りました。そんな時に同居している祖父がアルツハイマー型認知症と診断され家族としての介護がスタート。昼間は仕事で認知症の方と関わり、その他の時間は自宅で認知症介護という日々を送りました。精神的にも肉体的にも疲れましたが、その時の経験を生かして、認知症に苦しむ方達のために活動をしていこうと決意。認知症看護認定看護師の資格を取得して現在は認知症者本人やその家族、看護師・介護士からの相談や指導に関わっています