認 活男【にん かつお】ブログ
認知症看護認定看護師の情報発信活動ブログ
病院での出来事

説得ではなく納得のケアとは

目次

家に帰ると病院を出ようとした方

先日患者が正面玄関の前で暴れているとの連絡があり行ってみると、骨折の手術後でリハビリ目的で入院している80歳代後半の患者が大声を上げ、辺りにDrや医療安全担当者、事務関係者、看護師が取り囲むという光景が広がっていた。状況を把握すると

患者の主張は

  • 自宅に帰る
  • タクシーを呼んでもらえばいい

病院関係者の主張は

  • 入院中で家族の同意や迎えがないので今の状態で一人で帰るのは無理
  • 今の症状では入院してリハビリをすることがベスト
  • 介護保険で家の段差をなくしたり、手すりをつけたりすることや、通所リハビリなどのサービスを整えて帰るほうがいい
  • 今の時期は寒いのでもう少し暖かくなってから帰るほうがいい

お互いの主張を繰り返し、立腹した患者は暴力を振るおうとして注意されている。といった状態であった

もう少し情報を深堀りし、話を聞く

押し問答をしている時にちょっと情報の整理をしてみた

この方の性格は短気ですぐに実行に移すタイプの人、簡単に言うと江戸っ子みたいな印象を持った。その他では

  • 高齢の妻と2人暮らし
  • 近くに娘がいて時々様子を見に来てくれる
  • 自宅で転倒して大腿骨の骨折をした
  • 今はリハビリ中で歩行器で歩けている
  • リハビリ参加には消極的(リハビリ担当者より)で「自分でリハビリをする」といい、病院内を歩行器や車椅子を使いウロウロ
  • 麻痺などはなく、骨折のみ
  • 認知機能の検査では軽度認知症レベル

患者の本当の希望(ニーズ)は何?

まずは患者に自己紹介をして話を直接聞くことにする、
周りの人達には何かあったら呼ぶので、”患者の視界に入らないところ”に行ってもらうように説明。威圧的な雰囲気を改善して、患者の話を聞きに来たという雰囲気作りをする

ベンチに腰かけている患者の90度右に腰を下ろし、視線が対面になる事で緊張感が発生するのを避けるよう調整


余談だが、自分は話をする時に気を付けている事として、話す環境にはすごく気を遣うようにしている
・徘徊をしている患者であれば一緒に徘徊しながら
・カウンセリングルームであれば対面に座らず視線を少しずらせる斜め前
・妻に言いにくい事を伝えるときには横に座る
出来るだけ1対1で話をする(会話中に横から色々言われると患者の言いたいことが聞けなくなる) 


環境を整えた上で話を聞いたが、病院関係者と患者との会話にズレがある事に気付く

ニーズは
“家に帰りたい”こと
だが、「家に帰るためにはもう少しリハビリをしないといけない事はわかっている。ここの病院はリハビリ専門の病院ではないので、近くのリハビリ専門の病院に行くために、家に帰って物品を揃えて、リハビリ病院の外来に行こうと思っている」
という事だった
また、「ここのリハビリはきちんとやってくれない。このままでは退院して家で暮らすのが遅れてしまう」との意見も聞くことができた

問題点として

  1. 病院関係者が本当のニーズを把握していない
  2. リハビリとの信頼関係ができておらず、不満を持っている

があり、これを解決することが必要だと考えた。


もう少し深く原因を考えると

問題点の①については

  • 病院側の主張を通すだけで患者の本当のニーズを聞けていなかった。
  • 日々の看護の中で骨折の完治ばかりに目が行ってしまい、患者が何故骨折を治したいのか、治ったらどのような生活を送りたいと考えているのか?という事を把握する視点がなかった
  • 軽度認知症という事が病院関係者の頭の中にあった可能性がある

問題の②については

  • 上に書いた事と一緒で、患者が何故骨折を治したいのか、治ったらどのような生活を送りたいと考えているのか?という事を把握する視点がなかった
  • リハビリをしない原因は何なのか?という事を深堀り出来ていなかった

実際の対応

  • リハビリ専門の病院に行きたいことを家族へ伝え了解を得る
  • 相手側の病院との調整
  • リハビリ担当者へ情報を提供してリハビリ専門の病院でも、行われるであろうプログラム(自宅の環境を想定したリハビリ)を設定し本人へ説明。納得してもらったうえでのリハビリを行う

という事を速やかに行う事で
患者に「ありがとう。話を聞いてもらえた。次の病院に行くまでこの病院でやってみます」と言ってもらう事ができた

まとめ

これをみて
「そんな事は当たり前の事で、病院の質が低いからそんな問題が起こるのではないのか?」と考える人は多くないと思う。

しかし私は自分の病院を質が低いとは思っていない。
一般的な病院で患者満足度は高い方だとも思っている
では何故このような事が起きたのか?

それは日々行っている“看護や介護”と、”頭で考える理想の看護や介護”とに差があるからではないだろうか?
頭では「こうしたらいいよね」「こうするべきだよね」と思っていても、時間に追われながらサービスを提供していると、「振り返って考えるとこうすればよかったよね」という事が必ず出てくると思う。

そうならない為には、

  • どんなに忙しくてもカンファレンスを開き、皆で考える時間をとる事
    (当然のことかもしれませんが・・・)
  • その人のニーズ(どうなりたいのか)は何なのかを必ず話題に出す事

だと思う
うちの病院も当然カンファレンスは開いているが
認知機能の低下がある=帰宅要求は当然起こるもの、ニーズが現実とかけ離れていて達成するのが難しい事が多い 等の理由により

  • 医療従事者が問題と思う行動の解決にばかり視点がいってしまう
  • そもそもニーズを聞いていない

事がよくある。

周辺症状(問題行動と呼ばれるかもしれない)への対応を話し合う事は大切だが、ニーズを把握してそのために何が出来るのか、を考えるのはもっと大切だと思う


また、今日の題材にある”説得ではなく、納得のケア”という事では
患者のニーズを聞き、それに対して最大限出来ることを考えて相手に情報提供し、患者自ら行動してもらうのが納得のケア
病院関係者が患者の為を考えて情報提供し、関係者主導で患者に行動してもらうのが説得のケア
ではないだろうか

認知症の患者にはもちろん納得のケアが必要であるが、認知症者に関わらず医療従事者の視点として納得のケアを目指していく事が必要だと思う
子供に勉強するように言っても目標や目的がないとしないのと一緒ですね・・・

最後まで読んで頂きありがとうございました

ABOUT ME
認 活男
准看護師として認知症看護に関わり始め看護師へとステップアップ、在宅や介護保険制度に関わる知識が必要と考えケアマネージャーの資格を取りました。そんな時に同居している祖父がアルツハイマー型認知症と診断され家族としての介護がスタート。昼間は仕事で認知症の方と関わり、その他の時間は自宅で認知症介護という日々を送りました。精神的にも肉体的にも疲れましたが、その時の経験を生かして、認知症に苦しむ方達のために活動をしていこうと決意。認知症看護認定看護師の資格を取得して現在は認知症者本人やその家族、看護師・介護士からの相談や指導に関わっています