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抑制を行う理由は?
体幹の拘束帯・四肢の抑制帯・ミトン・離床センサーの使用など、身体拘束を行う道具はいろいろある。一昔前にはあまり議論されずに使用されていたが、倫理観が高まるこの世の中、使用頻度は徐々に低下傾向にある。私が働いている病院でも減少しているが〝0"にはなっていない。
では
なぜ身体拘束が減らないのか?について考えてみると、一番意見として多いのは
患者の安全を守るため
仕方なく行っている。ではないだろうか
実際私もそう思っている部分もある。が、この本を読んで、
もう少し患者側の目線を持って接することが必要であることを学んだ
まずは倫理
倫理という言葉を聞いての
以前の私のイメージは
そんなお堅い事を言わなくてもいいんじゃね?
であった。
しかし、学校で倫理を学び
人それぞれ価値観や考え方が違う中、医療職・病院スタッフの一員として
- 守り、行うべき道についてしっかり学習する
- 行為の善悪の判断において基準になるものを定期的に確認しておく
のは重要なことだと思った。
この本の倫理の部分で印象に残ったのは
リスクマネジメントの視点を持つことが大事であると述べられていたことだ
誰もが妥当と思う治療をしても
医療者と患者(家族も含めた)間の関係がうまくできていなければ、良い医療を受けた。という事には繋がらない
逆に言うと
関係がうまく保てていれば、医療事故だと思われる事例も事故になりにくい。という事だと感じた
例えると
入院している認知症者に対して
A,家族の面会の度にスタッフが近況を報告し、家族はその対応に感謝しているような関係の病院
B,家族の面会があっても、そっけない態度のスタッフ。家族はその態度に不満を持っている関係の病院
ある日、
スタッフが患者の爪を切っている時に身を切ってしまった時、裁判沙汰になりやすいのは
もちろん Bの病院 という事になる
看護師の中には、「治療の事なので医師に聞いてください」と
状態について話をしない方がいるかもしれないが、
「熱は落ち着いてきています」や「検査データ上は良くなってきているような印象を受けますが、詳しい状況が聞きたければDrに説明を依頼しましょうか?」と一言声を掛けるだけでも安心感は違うと思うので、意識して対応してみてはどうだろうか
抑制=安全か?
抑制=患者の安全と関連付けられているが本当にそうだろうか?
本の中で述べられているのは、
- ミトンをしている方でも胃管を抜去された方もいらっしゃる。
- 離床センサーが設置されている方でも転倒をおこす
- 監視モニターをみてベッドサイドに駆け付けた時には、すでに転倒している
私の病院を考えてみても、同じような事が起こっており、確かに抑制=安全とは言い切れないと思う。
さらに考えられることは
抑制をすることによって生じる弊害である。
抑制が行われることにより、患者の筋力の低下や活動意欲の低下、せん妄の出現等は容易に想像できるが、注目したのは看護師のアセスメント能力の低下が伴う点である
どういうことかというと
- 何故患者が離床しようと考えているのか?
- 何故患者は上肢を顔に持っていこうとしていたのか?
- どうすれば抑制を回避できるか?
など、立ち止まって考える事をしなくなり、患者の安全を守るために抑制しよう。と安易な考えに陥ってしまうようになる。
金沢大学では離床センサーを使用しないために、
- 患者の排尿パターンを把握して先回りをして排尿誘導するようにしよう
- 看護師のペア性の看護体制を導入して見守り体制を強化しよう
- 夜間の見守り体制を強化するために夜勤人数を調整しよう
などの取り組みを行っていたとの事であった。
もちろん施設により出来る事、出来ない事はあると思うが、重要な事は
患者のADLやQOLを維持するため、患者中心の看護を行うために工夫をする事
が重要であると思う
まとめ
本の中には金沢大学病院での事例がいくつも示されていた。
自分の勤めている病院で、「この行為は身体拘束になるのではないか?」「なんかモヤモヤするんだけれど、この気持ちをどうすればいいかわからない」と悩んでいる方は、書店で手に取って読んでみてはどうだろうか
私自身の経験では、
「この身体拘束は介助できるかもしれないが、わからないので黙っておこう」と、そのままにするよりも、問題提起してカンファレンスを開きみんなで話し合った方が、自分も他の看護師も満足する頻度が多いと思う。
でも、そんなことより
患者にとっては人生をかけた大問題なのである。
自分の発言はこの患者の人生を左右している。位の気持ちで頑張りたいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました