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言いたいことが言えない
私が認知症看護認定看護師の教育課程在籍時代に「なるほど」と思った事として、認知症の方は自分で考えている事を言語として表現ができない。という事がある
例えば痛みがあったとしても、体から湧き上がってくる不快感が何なのか理解できない。当然、家族や医療関係者に対して痛い事を伝えられないため〝そわそわ”といった行動で表現されたり、”易怒性”という怒りの感情として表現されたりする。
主に認知症の中期以降に出現してくるBPSDとも言われるが、私達医療者はフィジカルアセスメント(視診・触診・聴診などを使い意図的に情報を集めて判断する)を駆使して、患者に何が起こっているのか、疑われることは何なのかを判断していかなければならない
でも認知症の方の家族の方にそれを求めるのは難しいと思うのだが、「何かちょっと違う」と感じる事や、普段の生活の中で認知症者の気持ちを代弁することは出来るのではないかと考えている
で、紹介したいのが今読み進めている本の中で著者の方が想定されていた
「サザエさん」の波平さんが認知症になったら
という項目だ
ワカメちゃんは磯野家を救う?
著者の井桁之総氏の想定では
波平が認知症になればサザエさんや妻のフネさんは波平の事を受け入れずらくなり、辛くあたる事が想定されるとの事
しかし
カツオやワカメ、甥であるノリスケ一家等がいるので、波平の気持ちを汲み取り代弁し、活躍してくれるであろう。その中でも最も活躍してくれるのがワカメちゃんではないかと述べられている
それは
小学校3年生くらいの女の子は母の家事を手伝い、みんなの仕事の真似をして役に立とうと頑張る「ミラーリング」効果が抜群であるからとの事
このミラーリングとは
ボクシングの試合を見ながら自分もパンチを出したり、恋愛ドラマで感情移入して泣いてしまったりするような効果の事で、ミラーリングに関わる神経は大脳の前頭前野にたくさんあり言語を習得したりする働きや、心の成長にも関係してくるとの事
つまり、
気持ちを言語として表現できない障害である、認知症を発症した波平に対して
ワカメちゃんを筆頭にカツオやタラちゃん、イクラちゃんはミラーリング効果を使い
言動・表情・行動を自然に観察して気持ちを大人たちに伝えることができる
波平の気持ちが伝わるという事は医療従事者が行っているフィジカルアセスメントや認知症者への介護が出来ているという事、BPSDが起こる事を未然に防ぐ効果があるという事なので、家族もイライラせずに済む=磯野家は安泰という事に繋がる
まとめ
今回はミラーリング効果について紹介したが私が思う事は2つ
- 大家族って最強だよな
- 大人がミラーリング効果が乏しいからといって、認知症の方の思いをくみ取れないわけではない
①では
やっぱり大家族、特に子供がいる家族は最強だと思っている。
波平はカツオが永遠の小学生であれば説教の毎日で、アルツハイマー型認知症になる確率はかなり低くなると思う。
もしレビー小体型認知症や脳血管性の認知症になったとしても支えてくれる人が多ければ介護施設ではなく、在宅生活が送れるのではないか。
もちろん、
介護施設が悪いという訳ではなく、統計的な話として自宅で暮らしたいと考えている高齢者が多い。という事実があるからだが、そのような願いも介護者が多ければ介護負担を分散することができる。
②では
“この人の思いを理解したい”と思って接すれば大人であっても、男女に関係なく思いをくみ取ることができるという事
私は看護学生が来た時に
受け持ち患者のカルテ情報に記載されていないこと+私が知らない情報を、今日中に10個拾い集めて来てください。と課題を出す。
もちろん患者の状態によりけりであるが、そうやって情報を意図的に拾い集めることで患者と話す機会が増えたり、この患者をどうにか助けてあげたい。思いをくみ取りたい。と心配する気持ちが芽生える。実際に隠し子がいる等という驚きの情報を聞いてきたり、看護師さんには言えないけどこんなことで困っている。といった情報を仕入れてくることもある。
困りごとを解決するというのは認知症看護の原点でもあるし、看護の原点でもあると思っている(看護学生にゆっくり関わる時間がないので、一石二鳥なのは置いときます)
以上私が思う事を2つ紹介した。
認知症は生活の障害。症状のある方は記憶障害や見当識障害(時間・場所・人がわからなくなってくる)実行機能障害(物事を段取り良く進められない)などの障害を持ちながらなんとか生活をしよう。時には周りにそのことを悟られまい。と日々悪戦苦闘していると思う。
その手助けになればよいと思う
最後まで読んでいただきありがとうございました。